三井情報株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浅野 謙吾、以下 三井情報)と株式会社Epsilon Molecular Engineering(本社:埼玉県さいたま市、代表取締役社長:根本 直人、以下 EME)は、創薬を目的とした日本初(*1)の次世代抗体VHH(*2)のヒト化ライブラリーであるPharmaLogical™ Libraryの共同開発を完了し実装段階に移行することを発表しました。三井情報とEMEは今後、PharmaLogical™ Libraryを活用し創薬につながるVHH抗体の取得・デザイン・最適化を進めることで、製薬企業の創薬に係る研究速度及び医薬品開発確度の向上を支援してまいります。
人間の体は病原菌などの異物(抗原)が体内に侵入すると、その異物と結合する抗体をつくって異物の無毒化や排除する免疫機能を有しています。この仕組みを人工的に利用した薬は「抗体医薬」と呼ばれており、その中で大きく注目されているのがラクダ科動物が産生するVHH抗体で、EMEはそのVHH抗体を利用した抗体創薬に取り組んでいます。VHH抗体はそのまま人間に投与されると異物と判断されてアレルギー反応が起こってしまうため、「ヒト化」と呼ばれる人間が持つ抗体に似せるプロセスが必要となります。また、修飾を受けやすいアミノ酸や糖鎖修飾配列等は製剤化における不均一性(ヘテロジェナイティ)を引き起こす原因となるため、配列を最適化するプロセスが必要です。今回開発したPharmaLogical™ Libraryは配列を最適化したVHH抗体のライブラリーとなっているため、これらのプロセスを省略することが可能であり創薬プロセスの迅速化が期待できます。
■PharmaLogical™ Libraryのポイント
● VHH 抗体の結晶構造解析データを基にしたデザイン
抗体フレームワーク(FR)部分に関して既に臨床応用されているヒトFR 配列とVHH の結晶構造解析データの結果得られた構造特性を基にデザインしたヒト化VHH ライブラリーです。そのため、VHH 抗体の特徴であるCDR3の構造多様性を再現することができます。また、抗原認識部位を形成するCDR はアルパカ由来VHH から得られた構造特性の情報を基に設計しており、特に抗原結合に最も寄与することが知られているCDR3 を大きくランダム化することで、さらなる多様性を発揮します。
● 製剤化における不均一性を引き起こすアミノ酸の出現頻度に抑制をかける設計
修飾を受けやすいアミノ酸や、システイン、プロリン残基のような大きな構造変化を引き起こす可能性のあるアミノ酸は製剤化プロセスにおける不均一性を引き起こす原因となります。これらのアミノ酸の出現頻度を抑制する設計を行うことで、創薬プロセスで生じる課題の最小化が期待できます。
●これまでにない革新的なVHHスクリーニング
PharmaLogical™ Library の持つ1013-14(10 兆~100 兆)という多様なライブラリーサイズ、更にEME のコア技術であるcDNA display 技術(*3)と三井情報がMKI-DryLab for Microsoft Azure (*4)にて提供するスクリーニングシステムを組み合わせることで、これまでにない革新的なVHH スクリーニングを展開することが可能です。
EMEは進化分子工学に基づくハイスループットスクリーニングをコア技術とし、ラクダ科動物が産生するVHHをはじめとした次世代抗体創薬に強みを持っています。三井情報は、1970年代よりバイオサイエンス事業に携わっており、製薬企業・アカデミアとの共同研究や「京」インシリコ創薬基盤プロジェクトへの参画等を通じて、創薬およびバイオサイエンス・ヘルスケア分野におけるIT技術の活用に力を入れてきました。両社は2020年4月よりVHH抗体を始めとした新規バイオ分子創製および創薬での活用において協業の検討を開始し、VHH抗体のスクリーニング技術を持つEMEと計算創薬やバイオインフォマティクスの技術を持つ三井情報における両社それぞれの強みを融合する形でPharmaLogical™ Libraryの共同開発を推進してまいりました。
今後、両社は構造・熱安定性等を改善した設計をさらに取り入れることで、PharmaLogical™ Libraryをより進化させてまいります。また、製薬企業等との共同研究を通じて、PharmaLogical™ Libraryから取得したVHH抗体分子を順次臨床研究へと進めていく事を目指します。
(*1)日本初:EME調べ
(*2)VHH:ラクダ科動物の持つH鎖のみで構成される抗体であり、その可変領域をVariable domain of heavy chain of heavy chain antibodyという。通常の抗体と比較して安定性や修飾性に優れている。
(*3)cDNA display技術:遺伝子型/表現型対応付けによる目的タンパクの取得を試験管内で行うことができる技術。1013-14(10兆~100兆)種類の分子を一度にスクリーニングすることが可能。
(*4) MKI-DryLab for Microsoft Azure: 三井情報が提供する計算創薬基盤および計算創薬支援サービス
以上
【報道関係者からのお問い合わせ先】
株式会社Epsilon Molecular Engineering
事業開発課
TEL:048-857-8880 E-mail : info@epsilon-mol.co.jp
【本製品サービスに関するお問い合わせ先】
株式会社Epsilon Molecular Engineering
事業開発課
TEL:048-857-8880 E-mail : info@epsilon-mol.co.jp