2019.10.13

【根本】第2回 資金調達のタイミング

「ITの方はいくら最先端の技術でも2,3年で陳腐化します。私がもし10年前にVCから資金調達をせずに、あのまま事業をしていたら、今も10年前と同じ受託をやっていたかもしれません」

たまたま縁あって知り合ったマザーズ上場企業(現在は東証一部上場)の社長さんの言葉である。その社長さんが続けて言った「バイオの方はわかりませんが、最先端技術であればやはり2,3年で同じことをするところが現れませんか」

確かにその通り。

 

1997年に発表したmRNAディスプレイ(当時、我々はin vitro virusといっていた)もまさにそうであった。1993年ぐらいにmRNAの3’末端にピューロマイシンという抗生物質をつけるという発想も、まさか、世界で私たちの他に考えている者がいるとは不覚にも予想もしていなかった。だから、私が1996年の札幌の日本分子生物学会年会でポスター発表していた時に、「ア、同じことをやっている」と言われた時には天地がひっくり返るほど驚いた。

その発言者こそ、後に東大教授となってペプチドリームを創業した菅裕明先生でした。当時菅さんはハーバード大学医学部の進化分子工学(でも)著名なSzostak研究室のポスドクで、同僚が同じことをやっていると話してくれました(もちろん詳細は話しませんし、聞きません)。それからが大変です。何しろ相手はNatureやScienceに年に3,4報発表する超有力研究室です(Szostak博士は後に、かなり以前にやったテロメアの仕事でノーベル賞)。それから1年後、論文をFEBS lettに出すまでは毎週Natureを見るのが本当に怖かった。その3か月後、Szostakのグループはほぼ同じ内容の論文をPNASに発表。

 

こんなこともあり、このmRNAディスプレイを安定化かつ高機能化して、しかも合成効率を100倍程度向上させて自動化を可能にした「cDNAディスプレイ」のハイスループットシステムを通常のグラントを用いて3年間もかけて作り上げるには危機感を感じた。

 

「1年で作り上げるには?」

 

EMEの資金調達を真剣に考え始めた。

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